「EPUB(イーパブ)」という言葉をご存知でしょうか?
電子書籍を扱う仕事をしていたり、電子書籍に興味がある方でないと、聞いたことも目にしたこともないかもしれません。
「なんとなく電子書籍の形式だろうな」とは分かっていても、PDFと何が違うのか、なぜ広く使われているのかまで詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。
今回は、ITやWebにあまり詳しくない方でも、「EPUB」の基本について学べるよう、、専門用語を優しく噛み砕いて徹底解説します。
1. EPUB(イーパブ)とは?
まずは、EPUBの正体を解き明かしていきましょう。
EPUBは電子書籍のフォーマットの1つ
EPUB(Electronic PUBlication)は、国際的な電子出版の標準化団体が策定した、電子書籍専用のファイル形式です。私たちが普段、パソコンで文書を保存する際に「.docx(Word)」や「.pdf」を使うように、電子書籍の世界で最も標準的なファイル形式がこの「.epub」です。
最大の特徴は、特定のメーカー(AppleやGoogleなど)の独自の技術ではなく、「誰でも自由に使えるオープンな規格」であること。そのため、世界中のさまざまな端末やアプリで読むことができるのです。
EPUBの歴史:迷走の時代から世界標準へ
かつて、電子書籍の黎明期には、メーカーごとにバラバラのファイル形式が存在していました。「この端末では読めるけど、あのアプリでは開けない・・・」といった不便な状況(フォーマット戦争)が続いていたのです。
これを解消するために、2007年に国際電子出版フォーラム(IDPF)がEPUBの初版を策定しました。その後、2011年に登場した「EPUB 3」で、日本語特有の「縦書き」や「ルビ」といった複雑な表現に対応。現在では、世界で最も普及している電子書籍フォーマットの座を不動のものにしています。
EPUBのファイル構造:中身は「Webサイト」と同じ!?
EPUBの中身を詳しく知ると、実はWebに関わる人にとって非常に親しみやすい構造をしています。
EPUBの実体は、「HTML」や「CSS」といったWebサイトを作る技術で構成されたデータを、1つのフォルダにまとめて「ZIP形式」で圧縮したものです。
- HTMLファイル: 本の文章が書かれている。
- CSSファイル: 文字の大きさや色、レイアウトを指定する。
- 画像ファイル: 表紙や挿絵。
- 設定ファイル: 本のタイトルや著者名、目次などの情報。
つまり、Webサイトを一つの箱にパッケージ化したものが「EPUB」だと言い換えることもできます。
専用のリーダーがインストールされていれば読める
EPUBは、そのままでは画像のようにパッと開くことはできません。使用している端末に応じて、本を読むための「ビューア(リーダー)」というアプリが必要です。
- iPhone/Mac: 標準アプリの「Apple Books(旧iBooks)」
- Android: 「Google Play ブックス」
- Windows: 「Kinoppy」や「Thorium Reader」といったアプリがあれば、ダブルクリックするだけで本のようにめくって読むことができます。
2. EPUBとPDF・デジタルブックは何が違うの?
よく比較されるのが「PDF」や「デジタルブック(Webカタログなど)」です。
最大の違いは「リフロー(再流動)」
EPUBとPDF、デジタルブックの決定的な違いは、画面サイズに合わせて文字が自動調整されるかどうかにあります。
- PDF・デジタルブック(固定型): 紙面をそのままデジタル化したもの。大きな画面で見るには良いですが、スマホで見ると文字が小さすぎて、指でピンチアウト(拡大)しないと読めません。
- EPUB(リフロー型): 画面の大きさに合わせて、文字数や行間が自動で組み直されます。スマホで文字サイズを大きく設定しても、文章がはみ出すことなく、快適に読み進めることができます。
比較表:EPUB vs PDF
| 項目 | EPUB | PDF・デジタルブック |
| 主な用途 | 主に読み物(小説、ビジネス書) | 資料、チラシ、マニュアル・カタログなど多岐 |
| 文字サイズ変更 | 自由自在(読み手が変更可能) | 拡大・縮小のみ |
| リフロー機能 | あり | なし |
| 画面最適化 | スマホでも快適 | スマホでも閲覧可能だが、大画面向き |
| 検索・引用 | 得意 | やや苦手(レイアウトによる) |
3. EPUBのメリット:なぜEPUBが選ばれるのか?
ビジネスや出版においてEPUBが選ばれるのには、非常に強力なメリットがあるからです。
今後読めなくなる可能性が少ない
特定の企業の専用形式(独自形式)で作ったデータは、その企業がサービスを終了すると開けなくなるリスクがあります。しかし、EPUBは「世界標準のオープン規格」です。たとえ今の閲覧アプリがなくなっても、他のリーダーで読み続けられるため、「情報の資産価値」を長く保つことができます。
動画や音声を入れられる
EPUBは単なる「文字の集まり」ではありません。
- 技術解説本に「操作説明動画」を埋め込む。
- 語学学習本に「ネイティブの発音音声」を付ける。といった、リッチな体験を提供できます。これは紙の本では絶対にできない、デジタルならではの強みです。
縦書きに対応している
日本語の美しさは「縦書き」にあります。EPUB 3以降、縦書きはもちろん、右綴じ、ルビ、縦中横(縦書きの中の半角数字など)に完全対応しました。日本の小説や雑誌の雰囲気を壊さずにデジタル化できるのは大きなメリットです。
レイアウトを細かく設定可能(固定レイアウト時)
「リフロー型は文字サイズが変わるから、デザインが崩れるのが嫌だ」という場合のために、EPUBには「固定レイアウト型」という選択肢もあります。写真集やコミックなど、1ミリ単位のデザインにこだわりたいコンテンツも、EPUB形式で作成可能です。
EPUBで作るとAmazonで出版できる
個人が「電子書籍を出したい!」と思ったとき、最大の販路はAmazon Kindleです。Amazonは独自の形式を持っていますが、入稿データとして最も推奨されているのがEPUB形式です。EPUBさえ作れるようになれば、全世界に向けて自分の本を販売するチャンスが手に入ります。
4. EPUBのデメリットと注意点
非常に優秀なEPUBですが、苦手なこともあります。
多言語対応がまだ完璧ではない
世界中で使われているとはいえ、特定の言語のフォント(書体)が端末に入っていない場合、文字化けしたり、意図しないフォントで表示されたりすることがあります。特に特殊な記号などを使う場合は、フォントをデータに埋め込むなどの工夫が必要です。
表示の「絶対性」がない(リフロー型の注意点)
リフロー型のEPUBは、読者の端末設定によって「1ページあたりの文字数」が変わります。「3ページ目の上から5行目を見てください」といった指定ができないため、マニュアルなどで場所を厳密に指定したい場合には不向きです。
「ビューア(リーダー)」がない環境では閲覧できない
上でも解説した通り、EPUBは「ビューア(リーダー)」がないと原則閲覧できません。
そのため、WEBサイト上でブックを公開したいときはデジタルブックの方がオススメです。またデジタルブックはCD/DVDに焼いて保存もできるため、記念誌など長く保管しておきたいものにも最適です。
デジタルブックの詳細はこちらからご覧いただけます。
5. 実はブラウザでもEPUBが読める
「アプリを入れるのはハードルが高い」という方へ。実は、いつも使っているWebブラウザでもEPUBは読めます。
ブラウザでEPUBを読む方法
- 拡張機能を使う: ChromeやEdgeに「EPUBReader」や「Checkerboard」といった拡張機能(プラグイン)を追加するだけで、ブラウザが電子書籍リーダーに早変わりします。
- オンラインビューア: 多くの電子書籍販売サイトでは、購入した本をブラウザ上でそのまま読める機能を備えています。
6. 自作のコンテンツをEPUB化させたい場合
「自分の持っている情報を本にしたい」「社内マニュアルをEPUBで配布したい」といった場合、どうすればいいのでしょうか。
EPUB形式の電子書籍を作るためのソフト
初心者からプロまで、レベルに合わせたツールがあります。
- Googleドキュメント / Apple Pages(初級):特別な知識は不要です。文書を作成し、メニューの「書き出し」から「EPUB」を選択するだけで作成できます。
- でんでんコンバーター(中級):テキストファイルに簡単なルールで印を付けるだけで、本格的なEPUBに変換してくれる無料のWebサービスです。Kindle作家に愛用者が多いです。
- Sigil(中級〜上級):EPUBを直接編集できる専用ソフト。HTML/CSSの知識があれば、かなり自由度の高い本が作れます。
まとめ:EPUBは「電子書籍の世界で最も標準的なファイル形式」
EPUBは、単なるファイル形式ではなく、「どんな画面サイズでも、誰にでも、美しく情報を届けるための魔法の箱」です。
- スマホでサクサク読みたいなら「リフロー型EPUB」
- 漫画や写真集などデザインを崩したくないなら「固定レイアウト型EPUB」
- 配布のしやすさを優先するなら「PDF」
- WEBサイト上で公開、もしくはCD/DVDに焼いて保管したいなら「デジタルブック」
それぞれの特性を理解して使い分けることで、あなたのデジタルコンテンツの価値はさらに高まります。まずは、手元にある文書をGoogleドキュメントで「EPUB」として保存し、自分のスマホで開いてみても面白いかもしれません。
デジタルブック制作サービス デジサクではデジタルブック制作のほか、EPUBの制作も承っています。
ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください!
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